溺レルアナタ(2)

― 自分のサイトを作ろうとは思わないですか?

 

うーん。思ったことはあるんですけど。自主規制してました(笑) 
「やりはじめると、とことんやらないと気が済まない」っていう性格で、しかも、「一度にいくつものことができない」不器用者なんで。自分のサイトなんか作ってしまったら、書くことそっちのけで、はまってしまうに違いない、と(笑)

 

 でも、今度本を出版することになって、出すからには少しでも多くの方に知っていただきたいと思うので、そのためのサイトを作ろうかな、と思案中です。作品を置いただけの、素っ気ないサイトになってしまうかもしれませんが。じゃないと、ほんとに、ミイラ取りがミイラになっちゃいそうなのでー。

 

― 今回ネオブックから出る本の原稿は、ネット発表分とは別に書き進められたのですか?

 

はい。まったくの別物です。
私は、ネットデビューする前から、ぽつぽつエッセイや小説を書いていましたし、今も、長い書き物とかは、ネット発表分とは別に書いています。
簡潔で、テンポのいい文章であれば、ネット上でも読みやすいんでしょうけど、私の書く物は、長くなればなるほど、どうしてもそうはならなくて(苦笑)。
そうなると、やはり、ネット上で、読んでもらうのは難しいと思うし。
私自身、そういうものは、「紙の上の縦書きの活字」で読んでほしい、という思いがあるものですから。

 

― ネットに適した文章と、紙で読むのに適した文章があるということですね。

 

そうですね。これは、わたしの好みの問題かもしれませんけど。
読み手を一気に捕まえて、どんどん進んでいくようなものなら、ネットでも楽しめるんです。リズムがあって歯切れのいい文章。又は、少ない言葉で綴られた空間のある文章などは、ネットに向いているような気がします。ネット上でも、横書きでも、すんなり内容が入ってくるし、空気を感じることもできるので。

でも、言葉や情景を積み重ねて、ゆっくりと静かに進んでいくような文章。読み手が、少しずつ引きずり込まれていって、いつのまにか深くはまってしまうようなもの。こういう文章を味わうのは、「紙」でないと難しい。ネットだと、読んでいて、上滑りしてしまう、というか。なかなか、入り込めないんですね。だから、「いつのまにか」まで辿り着くことができない。

 

― じゃあ、ミメイさんは意識的に書き分けてるんですね。

 

自分は、ふつうに書くと、どっちかといえば、後者のほうだと思うんです。味わいがあるかどうかは、別にして(笑)
ですから、ネット上に書くときは、ちょっと意識して変えています。 ひとつの文章を短くするとか、改行を多く入れるとか、漢字を少なくするとか、そんな細かいことなんですけど。


「漢字」というのは、紙の上の縦書きだと、それほど気にならないで読めてしまうのに、ネット上の横書き文章に、漢字がだーっと並んでいると、それだけで「読みにくい」と思ってしまう。不思議なことに。
だから、ほんとは漢字を使って強調したいようなことばを、あえてカタカナにしてみたり。 最近、文章にカタカナを使う人が多いという記事を何かで読みましたが、わたしは、あれはネットの影響ではないかと思っているんです(笑)

 

― 本に収録する原稿はどんな風に選んだんですか?

 

今回本にする原稿は、すでに書き上げてあった物の中から選ぶことにしました。とりあえず候補作をいくつか絞ったあと、それら全てに手を入れていったんですが、これがなかなか遅々として進まず。ほんと、編集者さんには、あれこれとご迷惑をおかけしました。 その他に、このタブロイドに掲載していただいた短編も、入れさせて頂くことにしました。短編集なので、同じようなトーンの作品を揃えたい、と考えたら、このタブロイドの為に書いたものになってしまったんです。タブロイド愛読者の方々には、申しわけないのですが。

 

ただ、ひとつ言わせていただければ、同じ作品でも、今度は、「本」ならではの「縦書き」の味わいを感じて頂けるのではないか、と。縦書きと横書きの、マジック。この読み比べができるのは、タブロイド愛読者の皆さまだけですから(笑)

 

― 本にまとめてみた感想はどうですか?

 

そうですねーー。ひとことで言って、大変でしたー(笑)
自分でこつこつと書いているとき、とりあえず作品として書きあげたとき。それぞれの段階で、それなりに悩んで推敲してきたつもりだったんですが。これが「本」になるんだ、と思いながら見直してみると、今まで気づかなかったようなことが、あれこれ見えてきちゃったんですよね。ふしぎなことに。


「読み手を意識して書く」ということが大切だっていうのは、よく言われることだけど。迎合するとかそういうことじゃなくて、「分かりやすい」ようにとか、「矛盾」のないように、とか、そういう基本的なことで。

今までも、そういう意識はあったはずなのに、それでも、気づかないうちに、ひとりよがりになってしまっている部分っていうのが、けっこうあるもんなんですね。 「本」にするということになって、初めて、ほんとに「読み手」を意識することができたのかもしれません。そういう意味では、ほんとうに、「勉強させていただきましたー」(礼)っていう感じです。

 

― 本にするときは「完成させる」意識が高かったのでしょうか?

 

うーん。元々、ひとつの作品を完成させるためには、自分が納得できるまで、しつこく推敲するほうなんですけど。それが、自分の中での満足のためだけではなくて、読んでくださる人にとっての満足とは、どういうものか?ってことを考えるようになった、というか。あ、それが、ほんとの意味での「作品の完成」というものなのか……。今初めて、気づきました(笑)

 

― それでは、最後にミメイさんから本のアピールをしてください。

 

この本のテーマをひとことで言うと、「オンナは怖い」といったところでしょうか。ちょっと歪んだ愛、ちょっと方向を間違えてしまった愛のオハナシ。ホラーではないけれど、どことなくゾワッとするような物語を集めてみました。真夏の寝苦しい夜に、ぜひ1冊。夢でうなされるかもしれませんが(笑)しんと静かに、じわじわと沁みいるミメイワールドをお楽しみいただけたら嬉しいです。